ヒプノセラピー体験記 その2


簡単な誘導瞑想の練習をしてから、いよいよ潜在意識の海の中へと潜る。

ますみさんのやさしい、落ち着いた声に導かれて、わたしは自分の中に入ってゆく。

『5、4、3、、、』

カウントされるごとに意識の階段を一段ずつ降りてゆく。

『2、1。。。』


『ー何か見えますか?』

ーーー真っ暗な空間。なにも見えない。なにも感じられない、どうしよう?。。。

と、その時ますみさんの声。

『それじゃ、足元を見てみてください』

その声に促されるまま視線を足元に落とす。そうすると、わたしの視界にはぼんやりと緑色の草むらが現れる。足元は、裸足の足が2本。あ、よかった、見えた。。。

『どんな感じがしますか?』

わたしは集中してみる。

ーー朝露に濡れた草むら。早朝なのか、標高が高いからなのか。ひんやりとした空気が清々しい草むらに、わたしは立っているようだった。足の裏に感じる、草のちくちくした感触。

周囲は、もやというか霧のようなものが立ち込めている。もしかしたら雲の中にいるのかもしれない。そのくらい高い場所なのか?

それをますみさんに伝えると、『いい感じです!その調子、』と励ましてくれる。

『今度は、視点をカナさんの頭上に移動して見て下さい。カナさん自身を、もう一人の自分が上から見下ろしているようなイメージで、俯瞰して見て下さい。どんな人が立っていますか?』と聞かれる。

わたしは言われた通りに視点を移す。


ーーそこには、一人の女の子が立っていた。

まだ幼い、10歳になるかならないかくらいの少女が見える。

髪は肩くらい、明るいオレンジ色の髪の毛をして、簡素な白いコットンのワンピースを着ている。

これは、わたしなのか?

『その子はなにをしているのか、その子に聞いて見て下さい』

わたしはますみさんに誘導されるまま、その子に尋ねてみる。


わたし『ここでなにをしているの?』

女の子『お花を摘んでいるの』

ますみさん『誰にあげるのかな?聞いてみて下さい』

わたし『誰にあげるの?』

女の子『お母さん』


ーーこんなふうに、自分一人ではそこで映像が止まってしまうような状況で、ますみさんがどんどん問いかけをしてくださって、ストーリーが続いてゆく。誘導瞑想、すごい。


さて、お母さんにあげるというお花を摘みにきた女の子。(潜在意識の中のわたし)

彼女の手を見ると、確かにちいさな花束が握られている。ここの野原に咲いている、素朴な野の花だ。これを摘みにきたんだね。

わたしは彼女に話しかける。

『ーおうち、近くなの?』

『うん、こっちにあるよ。お母さんもいるよ!』

女の子は、こっち!と、たたた、と駆け出してゆく。元気な女の子だ。


野原の先は行き止まりで、先端が崖になっている。その端っこに、ちいさなほったて小屋がある。

本当に崖の先である。眼下には、ヨーロッパの古城のような茶色の堅牢なお城が見える。

城下に広がる街並み。雲、雲、雲。緑、森。所々雨が降って、虹が出ているところも見える。どうやら相当標高が高い場所のようだ。全てが見渡せる場所。そして、巨大なお城は何だかとても怖い気がする。そっちには(街とかお城とか)には近づきたくないような気がする。もしかして、何らかの罰?を受けてこんな辺鄙なところに暮らす羽目になってしまった親子なのだろうか。。。?いわゆる島流しみたいな。。。


そんなことを考えていると、いつの間にか家の前まで来ていた。

『ただいまー!』と女の子は躊躇なく家のドアを開ける。わたしは一瞬緊張する。どんな人がいるのだろう。


玄関のドアを開けると、一部屋しかない粗末な部屋の片隅に、ベッドがひとつ置いてあり、そこにおばあさんが寝ている。他の家具は一切無く、簡素なキッチンとテーブルがあるだけ。

『お母さんただいま!お花摘んできたよ!』

女の子はお母さんの首に抱きつく。

ーあら、この方が、女の子のお母さんなのね。。思ったよりもずっと高齢だ。それに、とても小柄というか、小柄というより小さい、と表現する方がしっくりくるような女性。顔色はとても悪く、土気色になっている。眉間に皺を寄せて、とっても具合が悪そうに見える。

一方、女の子は元気いっぱいで、お母さんのベッドの端に座って、あれこれとおしゃべりをしている。


そんな情景をますみさんに伝えると、

『女の子に、本当はどんな気持ちか聞いてみて下さい』との答え。

そこでわたしは女の子の隣に座り、彼女にやさしく話しかける。

(この時になるとお母さんの姿は消え、女の子とわたしの二人だけだった)

『お母さん、病気なのかな?しんぱいだよね?だいじょうぶ?』

すると、さっきまで元気にはしゃいでいた女の子の表情は急に翳り、一転して悲しい表情になる。

お母さんに心配させたくなくて、自分の心細さを打ち消すようにカラ元気に振る舞っていたんだね、と分かる。

わたしは女の子の肩を抱き、よしよし、と慰める。

すると、わたしのなかに女の子の感情が入ってくる。お水がわたしの心の中に浸透するように、女の子の悲しみが、なみなみとわたしのハートに入ってくる。この子は、わたしでもあるのだ。


ーーとても心細く悲しい。お母さんがいつ死んじゃうかわからない。わたしはひとりぼっちになってしまう。怖い、寂しい。ーー

そんな感情がひたひたとわたしの心に入ってきて、瞑想しているわたしに涙が溢れてくる。

とても悲しい、寂しい、不安、ひとりぼっちになってしまう。怖い、孤独だ。。。

そんな感情が一気に押し寄せてくる。

そのことを、涙ながらもますみさんに伝えると、ますみさんは、次のように言った。

『それでは、カナさん、女の子を抱きしめて、ピンクの光でヒーリングするイメージで優しく包んであげて下さい』


わたしは言われた通り、女の子を抱きしめた。

そうすると、わたしの意識の中に女の子がすっぽり入ってしまうような感じになった。わたしはピンク色のハートで、自分と女の子を丸ごと包んだ。

『もう大丈夫だよ、わたしがいるからね。』

そう女の子に伝えると、彼女は安心したようだった。

その、安心、という感情が、彼女と繋がっているわたしの中に、手にとるように伝わってきて、どんどん心が癒されてゆくのを感じた。

悲しみや孤独を、ピンクの光がどんどんのみこんでゆく。寒くて冷たかったハートが、ピンク色の愛にあたためられて、心の中がピンク色にすっかり染め上げられた頃、もうじゅうぶん癒された、と感じた。


ますみさん『女の子の様子はどうですか?』

わたし『えーと、、、目に光が戻ってきたような感じです。もう、心細さがなくなったみたい。。』

ますみさん『そうですか!それはよかったですね。女の子はカナさんになんて言ってますか?』

『うーん、、元気に、してくれて、ありがとうって言ってる。。

わたしに、お礼をしたいって、言ってるみたいです。。』


すっかり元気を取り戻した女の子は、わたしに、『お気に入りの場所に連れていってあげる!』と言ってくれた。

女の子はわたしの手を取って、家から出ると、家の裏に走って行った。。。


続きます。











kana3histoire

はじめまして、kanaと申します。 『histoire』とは、フランス語で、『物語』という意味があるのですって…。 わたしの人生のものがたり。 日々のこと、思うこと、 ちょっとスピリチュアルな話、 大好きなお絵描きなどをあつめて 宝石箱のような場所にしたいなと おもっています。 あなた様にも、気に入っていただけると 嬉しいです。

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